落とす心配はいらないしスポーツなどでもつけられ種類も豊富ということで、現在はピアスの人気がイヤリングを上回っていると言われます。歴史的にもピアスのルーツは古く、ギリシャ・ローマ時代にまで遡れるほどです。その点イヤリングは、17世紀にねじ式やクリップ式金具の発明によって作られたので、比較的新しいアイテムです。このピアスとイヤリングの歴史について考えましょう。
1.イヤリング・ピアスとは?
♦ピアスとは?
ピアスは耳たぶに針が通るぐらいの穴をあけ、針を突き通して留める耳飾りです。釣り針形に曲げた針を穴にひっかけて使用するものと、穴に通した針を耳たぶの裏で留め具で留めるものとがあります。ピアスの一般的素材は金、銀、プラチナ、宝石、ビーズなどです。
♦イヤリングとは?
耳に取り付けて耳元を飾る装身具のことをいいます。もともと耳とリングで耳に付ける輪ということ意味ですから、ピアスに近いものでした。現在イヤリングと呼ばれているものはクリップによって耳に引っ掛けるクリップ式とねじ留め式、また磁石で装着するマグネット式などがあります。
耳飾りの形は、大きく分けると3種類にあります。耳にぴったりと固定する形のものはボタンイヤリング、ネジやクリップなどを用いて耳たぶに固定します。 また、輪の形をしたものをフープイヤリング。ビーズを垂らしたり細いチェーンを垂らしたりするイヤリングはドロップ・イヤリングと呼ばれています。
イヤリングの素材は多様で、金属、プラスチック、ガラス、貴石、ビーズ、木などがあります。
2. ピアスの歴史
♦ピアスは悪魔除けにつけられた!
耳に穴を空ける「ピアス」は、数千年もの歴史があると言われています。「旧約聖書」や「ギリシア神話」にもイヤリングの記述が見られますし、古代エジプトでは壁画の中にもピアスが見られます。
鉄製や、金銀細工の垂れ下がりタイプのものも、発掘品の中にみられます。元々ピアスの発祥は、邪悪な存在から身を守るためのものとして使われてきました。その根拠は国によって違いますが、古代では、悪魔は穴が開いている所から進入すると恐れられていました。耳は穴が開いていますから、そこを防御しなければなりません。悪魔は光物に弱いと言われることから、金属製品を身体につけていれば悪魔が近づきにくいと考えたようでした。
♦ペルシア時代の壁画には兵士たちがピアスをしている姿が刻まれている!
古代ギリシアでも魔よけとして用いましたが、その素材は宝石やガラス製のペンダント型のものもありました。男女問わず装着し、片耳にだけつけることも多く見られました。
古代ペルシアの遺跡からは、ピアスをした男性の遺骨が発見されていますし、現存するペルシア時代の壁画には男性兵士たちが、耳元にピアスをしている姿が刻まれています。古代ローマでは、宝石の入ったペンダント型が流行りました。ビザンチンでも、おおむね魔よけのピアスをつける習慣が受け継がれていました。
実用的な目的もありました。兵士たちは戦死した時の身元を確認するためピアスをつけていましたし、船乗りたちは万一海難事故などで命を落とした場合の弔いの費用にしてもらおうとピアスをつける風習もあったと言われています。
インドでは宗教的な儀式の1つとしてピアスの穴を開けるという風習があり、現在でも5歳になる少年にピアス穴を開けることがあるようです。
♦17世紀留め式イヤリングの地位がビアスにとって替わる!
中世に入るとベールをかぶる習慣が普及し、ピアスは衰退しました。16世紀バロック時代に復活し男性にも広く愛好されたものの、17世紀になるとクリップ式やネジ留め式のものが考案されたため、ピアスはイヤリングにとって替わられることになります。耳を傷つけることがないイヤリングの方が手軽なので、一般女性がそちらの方へ流れていきました。
ピアス人気が復活するには、1960年代ヒッピーの登場までかかります。1980年代になると、パンクロックアーティストがこぞってピアスをしていたことから、男性の間でもピアスをするという文化が確立していきました。
3.イヤリングの歴史
イヤリングの歴史はピアスよりずっと後になり、17世紀にねじ留め式やクリップ式のものが登場してからとなります。耳に穴をあけないため手軽につけることができるので、アメリカの中産階級の女性に愛用され、一時はイヤリングといえばネジ式やバネ式のものが主流でした。
18世紀は真珠のイヤリングなども人気を博し、18世紀末にはダイヤモンドに加えてサファイアやエメラルド、19世紀初頭にはカメオなども登場しました。
4.日本のイヤリング・ピアスの歴史
日本において、耳飾り(ピアス)が登場するのは縄文時代です。石を研磨して、その端に切り込みを入れた作りになっていて、環の端を耳たぶにあけた穴に入れて身に着けていました。
材質は縄文中期は骨製のもの、縄文後期には土製の耳飾りが中心となっています。
複雑な透かしす彫りで飾られたものをつけている土偶も出土しています。これを見ていると、日本にも小児期に耳たぶに穴があける儀礼の存在はあったと推測することができます。
弥生時代に入るとピアスと思われるものは、確認できなくなります。その後、古墳時代中期には、朝鮮半島から入ってきたと思われる垂(たれ)飾りを鎖でつけたものが出土しています。埴輪の耳にも、このタイプの耳飾りを装着したものが出土しています。ところが、奈良時代以後は耳飾りをつけている出土は、まったく見当たらなくなります。
アクセサリー全般に言えることですが、日本においては装身具の出土は近代になるまで、まったく見られないのが現状です。
明治期、洋装とともにピアスやイヤリングも外国から紹介されたでしょうが、普及には程遠いものでした。ピアスやイヤリングが私達の生活のなかに溶け込むのは、戦後になってからになります。
戦後、洋装の普及とともに、高度経済成長期からバブル時代がやってきて、豪華なイヤリングが市販されました。1990年代からは、イヤリングからピアスの時代になってきます。地金部分も少ないので安価で、活動しても紛失しにくいところが人気の秘訣なのでしょう。
まとめ
ピアスの歴史は古く、旧約聖書」や「ギリシア神話」にもイヤリングの記述がありましたし、ギリシャ・ローマ時代にまでさかのぼれるのは驚きですね。
が、その意図は悪魔よけでした。ところが1900年代初頭、ネジやクリップ式のイヤリングが登場したことにより、ピアス人気は凋落してしまいます。
ピアスが再度見直されたのは1960年代のヒッピーや80年代のパンクロッカーたちのおかげでした。
イヤリングは穴を開けなくて装着できるのがメリット!ただ欠点は、バネ式で耳が痛くなることと紛失しやすいこと。一方、ピアスは小さいので軽く価格も安価で種類も多く、何より落としにくいことがメリット。ただ、穴あけを不衛生な環境で行うと、腫れたり跡が残ったりするケースもあるのでご注意を!
顔の印象を華やかにするピアスとイヤリング!あなたに合うタイプを選んで、ピアス・イヤリングライフを楽しんでくださいね。