メガネがなくなると、近視の人も老眼の人も困りますね。メガネは私達の生活の空気のようなもの。年を取っても本を読んだり刺繍や絵を書くことが楽しめるのもメガネがあればこそでしょう。サングラスも紫外線を避け眼を防護するために、大切なアイテムです。これらのアイテムの歴史を、フレームを含めて遡ってみましょう。
1.メガネとは?
言うまでもないかもしれませんが、眼鏡(めがね)とは目の屈折による調節を補正したり、目を保護したりするために目に着ける道具のことです。老眼のためのメガネや近眼のためのメガネ、また乱視などのためのメガネなどもあります。初期の眼鏡は凸レンズを使っていて、遠視と老視を矯正できました。
2.メガネの歴史!
メガネといえば、レンズの発明がその発祥でしょう。レンズと呼べるようなものが歴史に登場したのは紀元前3世紀頃です。
エジプトやバビロニア、ローマ、インド、中国といったあたりで使われていたようです。しかしこのときの用途は太陽の光を集めて火をおこすといった用途で使われており、視力補正のための物ではありませんでした。
♦「リーディングストーン」補正用レンズの最初の発明
9世紀頃、イスラムの科学者アッバース・イブン・フィルナスによって「リーディングストーン」といわれる拡大レンズが発明されます。補正用レンズの最初の発明といえるものです。
このレンズは読書用で、本の上に直接置いて文字を拡大するために活用されました。これは文字の上に直接置いて使用したので、メガネとは区別されています。
♦顔につけるメガネの登場は13世紀中頃のヴェネツィア!
13世紀中ごろになるといよいよ、顔にかけるメガネが登場します(耳にかけて使うタイプはまだまだ先ですが)。
登場するのはイタリア。当時のヴェネツィアでは高いガラス製造技術を背景に、精度の高いレンズが製造されていました。このメガネは補読器と呼ばれて凸レンズがついていて、縁は鉄や木製で作られ老眼用に使用されました。
♦ツル式のメガネが普及するのは18世紀後半から19世紀初頭!
17世紀になると、ひもを使い耳にかけて使うメガネが出てきます。このつる式メガネはロンドンの眼鏡商エドワード・スカーレットという人物が開発したといわれています。ただし、特許まで取得したものの、実用としては適さず普及しませんでした。
♦19世紀にやっとツル巻き式テンプルめがねが登場!
19世紀になるとパンスヌという鼻にはさんで使うメガネやローネットという手持ち式のメガネが登場します(メガネのフレームに手に持つための長い柄が付いている)。
そしてついに「巻きツル式の眼鏡テンプルメガネ」も登場しました。
20世紀に入ると、2度の世界大戦はメガネの発展にも大きく影響し、実用性を備えた現代のメガネの基本型ができあがります。その後、さまざまなデザインのメガネが開発されていますが、基本はこのテンプルメガネから派生していったものです。
3.日本のメガネの歴史
日本ではいつからメガネがあるのかというと、16世紀半ばの戦国時代に記録があるようです。
当時、周防(現在の山口県)を治めていた大名である大内義隆にキリスト教の宣教師フランシスコ・ザビエルが贈ったのが最初といわれています。あのザビエルが日本におけるメガネの歴史のはじまりに関わっていたようです。
以後、長崎で初めてメガネが作られました。材質はべっ甲、水牛の角、馬の爪などで、京都、大阪、江戸などで売りに出されるようになりましたが、単独で売られたわけでなく他の商品と一緒に並べられていました。
というわけで戦国時代に日本に入ってきたメガネですが。レンズを作るのはなかなか難しかったのか、明治時代に入るまで日本ではメガネは生産されていませんでした。明治時代になって朝倉松五郎という人が政府の命を受けてヨーロッパに渡りメガネ作りを学んだことでメガネが生産されるようになったようです。
また、明治期には、さきほど紹介した「ローネットメガネ」が鹿鳴館の貴婦人の間で流行しました。
4.サングラスの歴史!
♦サングラスとは?
サングラスとは、ご存知のように強い日差しから目を護るためのものです。紫外線をカットしたり、まぶしさを抑えるために使用します。
英語のスペリングから想像すると、太陽光から眼を守る保護具という意味合いを感じられます。サングラスは可視光線透過率の低いレンズを使用し、外から目が見えない仕様のものをサングラスとしています。
♦サングラスの発祥!
サングラスの発祥ですが、北極のあたりに住むエスキモーの人々が太陽の光から目を守るために使っていた遮光器が原型といわれています。太陽光と雪面からの照り返しが強く目を守る必要に迫られてのことかもしれませんね。
また、ローマの皇帝ネロが、エメラルドを利用して作ったサングラスを使用し、剣闘技を観戦したという説もあります。
そんなサングラスが最初に大量生産されたのは1929年のことです。アメリカの事業家が、眼を守るためという光学的な観点から、サングラスを安価に販売したことで一般に普及していきました。
♦1960年代のサングラスはガラス製でカラーも濃かった!
1960年代はシンプルで簡素なサングラスが人気でした。クラシック・スタイルとして現在も人気が高いタイプです。この頃のサングラスのレンズは、主にガラス製で色もグレーやグリーン、ブラウンとなどの色が主流でした。
1980年代に入るとスポーツにも対応したサングラスに人気が出てきます。フレームの種類も多様化し、ナイロンやカーボンフレームなども採用されるようになって、軽くてかっこいいサングラスが入手できるようになりました。
5. メガネフレームの歴史!
♦すべては「単玉眼鏡」から始まった!
メガネフレームは13世紀に発明された拡大用レンズ「リーディングストーン」の周辺を真鍮や鉄、あるいは動物の角などと組み合わせ持ちやすくして、そこに柄をつけた「単玉眼鏡」。これがフレームとしての第一号でしょう。
14世紀になると、2つの「単眼眼鏡」をリベットで固定したものが現れます。15世紀には「ハサミ眼鏡」というタイプが登場。これらの素材は鉄、木、ニッケルなどの合金でした。
♦ひもつき眼鏡は16世紀にお目見え!
16世紀になると「ヒンジ眼鏡」といって、鼻幅に合わせて左右を調整できる眼鏡が登場しました。また、メガネの歴史と少しかぶりますが眼鏡にひもをつけて耳にかける「ひもつき眼鏡」も普及しました。18世紀になると、テンプルの延びる「つる巻き眼鏡」が発明され、蝶番(ちょうつがい)がついて折りたためるようになった金属性の折りたたみテンプルも登場して、現在の眼鏡に近いものになりました。
初期の頃のフレームの素材は、鉄、竹、樹木、べっ甲、皮、象牙などの天然素材でした。また「真鍮、「洋白」といった銅合金も使用されましたが、緑青を出す欠点があり「ニッケル合金」が登場しました。
鉄にクロムとニッケルを加えた「ステンレス」は高い耐食性があり好評でしたが、一部にニッケルアレルギーを起こす人もいるため素材はチタンが活用されたりしました。近年になると、樹脂素材も使われ、綿花や石油由来物を原料とする「半合成樹脂」に樟脳(しょうのう)を加えた「セルロイド」や、酢酸を加えた「アセテート」も使用されています。ごく最近では、ナイロンやカーボンフレームなども採用されています。
まとめ
眼鏡は、光を集めるレンズから始まりました。それを何とか眼鏡というものに実用化したいという先人の工夫は、単玉眼鏡、ひもの眼鏡、鼻眼鏡、ツル巻き眼鏡までたどり着きます。
それは、先人たちの工夫の賜物でした。フレームの材料も鉄や木から始まり、真鍮、洋白とか重い素材が多かったのですが、現在のメガネフレームは樹脂製のものが多く、より軽量で使いやすい仕様となっています。今は当たり前に使用しているメガネですが、歴史を振り返ると改めて視力調節してくれる眼鏡の便利さに感謝してしまいますね。