ネクタイ普及の歴史とともに歩んだタイタックとネクタイピン!

ネクタイピンやタイタックはつけていらっしゃいますか? 最近はつけない人も増えてきたのはネクタイ裏に小剣通しがついたので不必要になったとかいう声も聞えます。ともすると、ブラブラと乱れがちになるネクタイを固定させるのに便利なツールです。当たり前につけているネクタイピンやタイタックですが、その発祥の地はどこなのでしょうか。ネクタイの歴史と絡めて探っていきましょう。

1.ネクタイピン・タイタックとは?

♦ネクタイピンとは

ネクタイピンという言葉は、和製語です。pinは本来「針」とかの意味。ネクタイ留めを表す英語は、タイクラプスといいます。このネクタイ留めですが、飾りではなくちゃんと実用的な役割があります。ブラブラしてしまうネクタイを固定する役割、また乱れなどの防止です。それとアクセサリーの役割で、スーツスタイルのアクセントにもなり、おしゃれ度をアップしてくれます。素材は金、銀、洋白、真鍮などがあります。

♦タイタック

タイタックとは鋲(びよう)がついているネクタイピンで、ネクタイとワイシャツに刺し裏でネジなどで留める方式のネクタイ止めのことを差します。付いているチェーンをワイシャツのボタンに取り付けると、ネクタイが固定されます。現在は冠婚葬祭などで使うくらいで余り使われていませんが、ネクタイを持ち上げて立体的に見せてくれますし、ワンポイントのアクセサリーにもなります。素材は金、銀、洋白、真鍮などの金属、1粒真珠とかダイヤなど宝石だけのタイタックもあります。

2.ネクタイとネクタイピン・タイタックの歴史

ネクタイピンとタイタックの歴史は、ネクタイの成り立ちと大いに関係がありますので、一緒にからめて見ていきましょう。

♦ルイ14世が取り入れたネクタイはイタリア・イギリスへと伝播!

17世紀半ばのフランス、当時の王はルイ14世でした。同盟国オストリアのクロアチア兵が首に巻いていた布を見ていたルイ14世が関心を持ち、宮廷にファッションとして取り入れたことから、このスカーフは広まることになります。これがネクタイの発祥と言われています。このフランスで生まれた流行はその後イタリアに伝播し、英国の社交界へと渡っていきアスコットタイ式へと変わっていきました。

♦1850年代ダブルカラー式シャツの誕生とともにネクタイ事情が変わる!

そして現代のような結び下げ式ネクタイに変わっていったのは、1850年代にダブルカラー(現代の折りえり)式のシャツが誕生したことと関係があります。その頃のスーツスタイルは上着のボタン位置が非常に高く、ネクタイは結び目以外の見える部分はわずかでした。そのため、1860年は「ボウタイ(蝶ネクタイ)」の原形である結び方が工夫されるようになりました。1900年代に入り少しずつ装いも現代的になってきますと、現代の大剣と小剣がある「フォア・イン・ハンド」式のネクタイとして確立します。1920年代頃と言われています。

♦タイタックについては、1850年以前に普及していた!

こうしたネクタイの歴史は有名ですが、ネクタイピンの歴史はほとんど文献も資料もあのません。ただタイタックについては、1850年以前には普及していたと言われます。先端の針になったタイタック…当時はこの形が主流でした。ちょうどダブルカラー式のシャツが生まれた頃と一致しますね。このダブルカラーによって、今まで蝶ネクタイのように結んでいた結び方が移行していく段階で、前に垂らしたネクタイが邪魔にならないような合理的に留めるピンが工夫されていったのでしょう。

♦1920年頃にはさむタイプのタイクリップが開発される!

1920年頃には、はさむタイプのタイバーと呼ばれる形状が普及しました。これがネクタイとワイシャツを一緒に挟み込む方式の「タイクリップ」いわゆる現代のネクタイピンだったと想定できるでしょう。ただ、かつては小剣・小剣通し、芯地などがなく薄いため乱れたりするのでその予防にネクタイ留めが作られましたが、小剣通しがついたり生地も厚くなって、ネクタイピンの実用性は薄くなってきています。

3.日本におけるネクタイピンとタイタックの歴史!

日本にネクタイが初めて伝わったのは19世紀半ば。ジョン万次郎が帰国の際に持ち帰ったネクタイが起源と言われています。その後、明治維新があり文明開化があり断髪令も出されましたが、なかなか進まず一般男性への普及は、明治20年代頃までかかりました。

洋装にしても同じことで政府高官や富裕層は積極的に洋服を着用しましたが、一般男性に洋服は普及しませんでした。詰えりの洋服が軍人の軍服、警官・郵便配達夫の制服、学生服として採用されたことで、洋服姿は街に目に付くようにはなりました。

ここでも背広でなく詰えりということでネクタイは着用されませんし、高官たちの装いも三つぞろえ(スリーピース)の背広が通勤着として普及したものの、ネクタイは蝶ネクタイタイプだったので、ネクタイピンは必要ありませんでした。ネクタイピン自体、まだ発明されていませんでした。

明治30年代には、洋行帰りの男性の間では中折れ帽、ハイカラーのシャツにスーツというスタイルが流行し、大正時代に入ると洋服の普及が一層進みました。大正末期にはステッキに、ロイド眼鏡、青いコンチネンタルスーツに中折れ帽の紳士の姿が見られるようになりました。しかし、まだえりは中折れでなく、ネクタイも蝶ネクタイスタイルでタイタックも活躍する環境にありませんでした。

♦昭和は戦争続きで国民服全盛時期!

昭和に入り、戦争が始まるとファッションに対する制限が加えられます。1940(昭和15)年「国民服令」で、一般男性はカーキ色の国民服が定められました。空襲が本格化すると身動きの取りやすい国民服は一挙に広まり、男性のほとんどが国民服を着るようになりました。

そして、終戦。戦後の混乱はしばらく続きましたが、戦後若者を中心に、多種多彩なファッションスタイルが生まれました。大人たちの服装としては、スーツが一般化しました。当初は、誰もがグレーのスーツを着ていましたが、その後スーツスタイルは徐々に洗練されていき、全ての場所で着用可能な大衆服になったわけです。こうした背景からネクタイと、それに伴うネクタイピンは普及していきました。

結局、日本でのネクタイピンは戦後になるまで普及しなかったということになります。

まとめ

タイタックは1850年前後、ネクタイピンは1920年以降の歴史でした。現在のようなネクタイ自体が1920年頃発案されたというのですから、そんなに古いものではありません。それでも、そろそろ100年近く経っているのですね。

現在では、ネクタイはビジネスにおける正装であり欠かせないアイテムでしょう。ネクタイピンは、おしゃれ機能も実用的機能も備えた万能アイテムです。昨今はつけない男性も多いようですが、種類も多彩でいろいろな楽しみ方ができますので、あなたも取り入れてみてはいかがでしょうか。

ウォレットチェーンの歴史と流行・発祥はトラッカーウォレットとバイカーウォレットと2説あり!

1.ウォレットチェーンとは?

ウォレットは財布のこと。財布に付けるチェーンで、ベルトやベルトループにつなげておきます。本来は、財布を防犯用や紛失用と発案されました。チェーンと言っても金属とは限らず、レザーメッシュ、ミサンガ、本皮などをベルトのように使用したウォレットチェーンもあります。勿論、数として多く、人気のアイテムは金属製のチェーンでしょう。素材は銀製、真鍮製に古美メッキをしたものとかデザインもいろいろな種類があります。

2.ウォレットチェーンの歴史

♦トラックドライバーが始めたという説

ウォーレットチェーンの歴史は、それ程古いものではなさそうです。というのも、諸説あってよく分かっていないのが現状なのです。その発端になったのは、トラック運転手という説があります。トラッカーウォレットという言葉がありますが、これはトラック運転手がよく使っていた財布という意味です。

トラックの運転手は長距離運転をするので、お尻に財布を入れておくと邪魔ですから、ポケットから抜いて運転します。ところが、トラックから降りる時に財布を車内に置き忘れることを防止するために、財布とベルトをチェーンでつなぎ忘れにくくした事がウォレットチェーンの始まりだという説です。

♦1950年頃から始まったバイカーサブカルチャーから出現という説

もう一説あります。バイク乗りは簡単に財布が取り出せるように財布をポケットに入れていたのですが、ともすると落としたりします。その落下防止に、チェーンをつけたのが始まりという説です。ライダーたちは長財布を愛用していたと言われていますが、なぜ長財布なのかはっきりしたことは不明です。

いづれにしても、アメリカンバイクを乗り回し、ブランド物のライダースジャケットにジーンズ、エンジニアブーツといったいでたちでウォレットチェーン付き財布などの愛用している「バイカーファッション」といわれるスタイルを好むライダーたちの動向が、50年代のバイカーサブカルチャーブームの発端になっていたことは否めないでしょう。

♦70年代のパンクブームとあいまってファッショントレンドになった!

そうした背景から出現したウォレットチェーン。そうしたバイカーサブカルチャーは少しづつ浸透していき、70年代のパンクブームとあいまってファッションのトレンドになり、ウァレットチェーンは、男性のファッションのアクセント・アクセサリーとして火がつきました。特に、パンクやハードロック歌手などはこぞってファッションアイテムとして、ステージ衣装などに採用しましたので、それに憧れてカッコイイアイテムとして、ウォレットチェーンも一般に普及していったというわけです。

3.鎖・チェーンの歴史

ウォレットチェーンといえば、財布とベルトをつなぐものとしてチェーンの存在があります。チェーンの存在の耐久性が本質的なのであって、あとは金具の問題だけでしょう。その中心である鎖の存在なのですが、ではこの鎖の起源はいつ頃なのでしょうか。

♦紀元前ピレウスの港の入口に鎖を張り外敵進入を防護

チェーンの歴史は古く、紀元前から多くの港で使用されてきました。防護壁を持つ港は、入口に鎖を張って外敵が入ってくることを拒みました。ギリシャ、ローマ時代にアテネの外港として築かれたピレウスの港が、鎖を使った初めと言われています。

また紀元前225年頃には、井戸から水のバケツを引き上げるためにチェーンを使用しました。この初期のチェーンは、金属リングを連結して構成されていたと言われます。

♦ヴァイキングが初めて鎖を錨(いかり)用に使った!

8世紀から12世紀にかけてスカンジナビア半島に住んでいたヴァイキングは 航海術にも開けていて、青銅器・鉄器も作ることができたと言われています。彼らが初めて鎖を錨(いかり)に用いたのですが、その錨がデンマークの島で発見されています。

1800年代になると、フランス人が自転車に使用するチェーンの特許を取得し、その鉄鋼のチェーンは自転車や初期の車の後輪駆動として使用されたと言われます。18世紀の始めになると、世界は大航海時代に入り、船舶の大型化と共にアンカーチェーンも縄に替わり、錨チェーンとしての役割に変わりました。こうした背景から、鎖は大量生産とともにコストダウンも可能になり装身具やウォレットチェーン、めがねチェーンなどにも活用されていきます。

4.皮革の歴史

ウオレットチェーンは金座チェーンが多いですが、皮革もひも状にして使われたり編んだりして使用されます。皮革の歴史も、少しだけ紹介しましょう。

♦起源は50万年前!

皮革の起源は50万年前にさかのぼります。驚くほど古い歴史を持った素材と言っていいでしょう。50万年前の氷河期といえば寒く悪い条件の中での暮らしでしたので、寒さや風などから身を守るために動物の皮を使用しました。古代人は狩りをして動物の肉を食べていましたが、食べた後は皮が残ります。それを利用して、寒さ塞ぎのコートや簡単なポンチョのようなものを身にまとっていました。

ところが、皮は短い間に腐食してくるので防腐加工が必要です。古代人は紀元前8000年頃、皮を煙でいぶす方法で腐敗することを防ぐ技術をあみだしました。紀元前3000年頃になると、特定の樹の皮に含まれる「タンニン」という成分が、革なめしに良いことを発見しましたし、アメリカインディアンは、灰汁に皮を漬けてなめす技法を発見しています。

♦古代ギリシアでは革加工の施設を設置、革なめし工も養成!

また エジプト人は馬具や盾、サンダル、バッグなどの様々な道具を革をなめして作り、革で貿易をしていました。古代ギリシアでは革加工の施設を設置、革なめし工も養成し技術を習得すると独立させ、さまざまな樹皮からタンニンを取りなめし作業を行わせて、いろいろなタイプの靴を作っていました。このように皮革は古代においても、腐敗止めの技法を得て衣類から敷物、甲冑、馬具、イスやベッドまでも多方面に渡る生活用品に活用されてきました。

♦現在も踏襲されている1858年の「クロムなめし」技術!

中世になると、アラブ人が革職人として突出してきて、ヤギ皮の製造技術を編み出し「モロッコ革」を作りました。これは、今でも評価が高く有名です。中世のイギリスではギルドが革取り引きを管理し、さまざまな日常製品が革から作られました。1760年英国で「タンニンエキス」を使う方法が考案され、それから19世紀の後期までその製造方法は変化なく続いていましたが、産業革命によって「合成なめし剤」が考案され、1858年には薬品によるなめし方法「クロムなめし」が発見されました。この方法は現在でも踏襲されています。

こうした革の歴史の中でウォレットチェーンにも革が使われるようになりました。革の独特の質感は味がありますし、「ジャラジャラ音がするのは嫌だ」という人にも適していますね。

まとめ

ウォレットチェーンの発祥は、トラッカーウォレットとバイカーウォレットという二説になり、どちらが先なのか諸説あってよく分かりません。いずれにしても、落下防止や紛失防止などの実用的根拠から製品化されたアイテムです。

歴史は、そう古くもなく、戦後1950年代頃からのバイカーサブカルチャーから浸透していき、70年代のパンクブームなどと合体して火がついていきました。現在でもファッション性の高いものとして人気があるウォレットチェーン!

ただ価格は余り安いものではなく、ある程度上質なものを付けた方がサビなども出ません。また、コスパ的にも結局はお得でしょう。余り何本も巻きすぎ、ジャラジャラと音を立てるウォレットチェーンは、女性には不人気なのでご用心を!